LINE株式会社の事例を通じて学ぶ

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日米同時上場で話題のLINE株式会社ですが、上場前の平成28年5月に、関東財務局から立ち入り検査を受けたとの報道がなされました。
今回は、なぜ、LINE株式会社に対して立ち入り検査が行われたのか、そして、この事例を通じて、事業者の方に考えていただきたいことを、弁護士法人 法律事務所オーセンスの企業法務弁護士である平沼氏にわかりやすく解説いただきました。

Q1
関東財務局がLINE株式会社に立ち入り検査をしたそうですが、どのような理由で立ち入り検査が行われたのでしょうか。

A1
LINE株式会社は、同社がスマートフォンで提供しているLINEPOPというパズルゲーム内の「宝箱の鍵」というアイテムについて、資金決済法の適用があるのではないかとの疑いが生じたことから、関東財務局から立ち入り検査を受けました。
LINEPOPには、「ルビー」というゲーム内通貨が存在し、「ルビー」に資金決済法の適用があることには、特に問題はありませんでしたが、さらに、ゲーム内に登場する宝箱を開けるために必要な「宝箱の鍵」というアイテムにも、別途、資金決済法が適用されるのではないかとの疑いが生じたものです。
調査の結果、関東財務局は、「宝箱の鍵」が、資金決済法に定められている「前払式支払手段」にあたるとの判断をしました。

Q2
「前払式支払手段」とはなんですか。

A2
「前払式支払手段」とは、図書カード等のプリペイドカード、商品券、プリペイド型の電子マネー、有償で購入するゲーム内通貨等の決済手段をいいます。
資金決済法は、
①金額等の財産的価値が記載・記録されていること(価値の保存)
②金額・数量に応じる対価を得て発行される証票等、番号、記号その他のものであること(対価発行)
③対価の弁済等に使用されること(権利行使性)
以上の要件をすべて満たす支払手段が「前払式支払手段」にあたると規定しています。
例えば、図書カードであれば、500円分のカードというように、財産的価値がカードに記載されており(価値の保存)、この図書カードを取得するためには相当する現金を支払わなければなりません(対価発行)。
そして、図書カードを用いて、実際に、500円相当の書籍などを購入することができることから(権利行使性)、図書カードは、「前払式支払手段」にあたることになります。

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Q3
資金決済法が適用された場合、事業者にはどのような義務が生じますか。

A3
資金決済法が適用される場合、事業者には、①内閣総理大臣への届出または、登録が必要となり、②一定の情報提供の義務が生じ、③毎年3月末日及び9月末日の基準日に「前払式支払手段」の未使用残高が1000万円を超える場合、未使用残高の2分の1以上の金額に相当する発行保証金を供託所に供託しなければならないこととされます。
これらの規定に違反すると、罰則が適用されます。

Q4
LINE株式会社の事例の場合、どのような点が特に問題になったのでしょうか。

A4
LINEPOP内のゲーム通貨である「ルビー」が「前払式支払手段」にあたることに問題はなく、LINE株式会社も「ルビー」に資金決済法の適用があることを前提とした対応を講じていたようです。
他方、「宝箱の鍵」というアイテムは、直接、現金を支払って購入するものではなく、「ルビー」を使用して購入するか、ゲームを通じて無償で取得するものでした。
そこで、直接には、現金を支払って購入しない「宝箱の鍵」は、「前払式支払手段」の要件の一つである対価発行性(A2の②)を満たすのかという点が問題となり得ます。
また、「宝箱3line-corp_case400267の鍵」は、ゲーム内通貨である「ルビー」を使用して購入し(一部無償で取得できることは前述したとおりですが)、ゲーム内で「宝箱を開けるためだけ」に使用されるアイテムですので、「宝箱の鍵」自体は、「前払式支払手段」とはいえないのではないか、すなわち、権利行使性(A2の③)がないのではないかという点も問題となり得ます。
関東財務局は、「宝箱の鍵」が「前払式支払手段」にあたるという判断を示してはいるものの、どのような理由に基づく判断なのかについては、一切、示していません。

Q5
対価発行性について、どのように考えられたのでしょうか。

A5
「前払式支払手段」を取得する手段は、必ずしも現金に限らず、財産的価値があるものはすべて含まれると考えられています。
「宝箱の鍵」については、たとえ無償取得できる部分があったとしても、原則として、財産的価値がある「ルビー」を手段として、「宝箱の鍵」を取得するという関係にある(また、無償で取得した「宝箱の鍵」と、「ルビー」を手段として取得した「宝箱の鍵」が区別できない)ことから、対価発行性を満たすと考えられたのではないかと思われます。

Q6
権利行使性について、どのように考えられたのでしょうか。

A6
この点については、専門家でも意見が分かれる難しい問題です。
通常、ゲーム内通貨を使用して、アイテムを購入した場合、そのアイテムは、権利行使の結果取得した最終的なものであって、「支払手段」ではないと考えられます。
ただ、「宝箱の鍵」というアイテムは、ゲーム内通貨を使用して、購入するアイテムなのですが、さらに、これを使用して、アイテムやゲーム内通貨である「ルビー」を取得できるアイテムでした。
関東財務局の見解が公表されていない以上、はっきりとしたことは不明ですが、「宝箱の鍵」を所持していたとしても、「宝箱の鍵」自体には、ゲームを有利に進めるような効果がなく、「宝箱の鍵」を用いて開ける宝箱の中身(ゲーム内アイテムやゲーム内通貨である「ルビー」)にこそ価値があることからすれば、「宝箱の鍵」というアイテムを取得したことをもって、最終的に権利行使をしたとまではいえず、宝箱の中身を取得するための手段に過ぎないとも思えます。
このように考えれば、「宝箱の鍵」に権利行使性を認めた結論は、妥当であったと考えられます。

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Q7
資金決済法の適用があると判断された結果、LINE株式会社には、どのような義務が生じたのですか。

A7
「宝箱の鍵」の未使用残高を追加で計上する必要が生じます。
その未使用残高は、200億円を超えるとも報道されていますので、その半額を供託するとすれば、100億円以上の追加での供託義務が生じます。
なお、供託する以外にも、銀行との間で保全契約を結ぶなどの方法も選択し得ますが、いずれにしろ、未使用残高を追加で計上したうえでの、対応が必要となります。

Q8
事業者としては、どのように対応すればよかったのでしょうか。

A8
新規事業を立ち上げる場合や新たな分野に進出する場合、既存の関連法令を調査することは当然ですが、既存の法令を調査したとしても、適法性についての判断に迷うことがあります。
判断がつかないまま、事業を進めた場合、今回のLINE株式会社のケースのように、担当機関から、立ち入り検査や、何等かの指導を受ける可能性があり、このような状況自体が、企業にとって好ましいことではないことは当然です。
では、調査をしたにもかかわらず、明確に適法性が判断できない場合は、どのような対応をすべきなのでしょうか。
このような場合、担当する行政機関に確認をとるという方法が最も有効です。
確認手段としては、担当窓口に電話で問い合わせるという簡易なものでも意味はありますが、より慎重に進める必要がある場合には、行政機関の見解を書面で開示してもらう制度(ノーアクションレター制度)も存在しますので、有効に活用していただきたいと思います。


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