TPP協定を受けた改正著作権法に関する議論の解説(後編)

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TPP協定の合意により、中堅中小企業が影響を受けることの1つとして、著作権法の改正があります。弁護士法人 法律事務所オーセンスの企業法務弁護士である酒井氏にわかりやすく解説いただきました。
なお、改正ポイント
5点のうち2点については、前編にて解説されておりますので、あわせてご参照ください。
本稿では、残り
3点、

(3) アクセスコントロールの回避等に関する措置の追加。
(4) 配信音源の二次使用に対する報酬請求権の付与。
(5) 著作権侵害罪の一部非親告罪化。
について解説いただきます。

Q1
「アクセスコントロール」とは何でしょうか。

A1
若干技術的な話になってしまうのですが、デジタル・コンテンツで、権利者が望まない者に視聴を認めない方法には、「コピーコントロール」と「アクセスコントロール」があります。
コピーコントロールは、コピー自体を禁止する方式です。一時期話題になっていたCCCDCopy Control CD)は、コピーしようとしてもエラーになってしまい、コピーできません。昔のVHSビデオには「マクロビジョン」という信号が付されているものもありましたが、これも、ダビングしようとしても画面が荒れてしまい、ダビングできません。これらはコピーコントロールに該当します。
他方、アクセスコントロールは、コピーはできるが、一定の権限がないと視聴できないという方式です。ブルーレイディスクをPCにコピーすると、m2tsファイルというものがコピーされるので、コピー自体はできているのですが、これをMedia Player等で視聴しようとしても視聴することができません。これは、コンテンツが暗号化されており、正規ディスクでない場合は暗号を解除できないためです。このように、正規のブルーレイディスクという権限がないと視聴できないというのが、アクセスコントロールの仕組みです。

Q2
アクセスコントロールの回避は、TPP協定による改正前の著作権法でも禁止されていないのでしょうか。DVDのリッピングは違法だと聞いたことがあります。

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A2
2012年以前は、DVDのリッピングを含め、アクセスコントロールの回避は違法ではないとされていました。しかし、その後、DVDで用いられているCSSContent Scramble System)という暗号を簡単に解除できるソフトウェア(DeCSS)が出回り、DVDのコピー(リッピング)が大量になされるようになりました。
そこで、20126月の著作権法改正で、このような暗号を回避して行う複製も違法とされるようになりました。DVDのリッピングは、暗号を外してコピーするものですので、暗号を回避して行う複製として、違法とされるようになりました。そのため、DVDのリッピングは現行法でも違法です。
ところで、「アクセスコントロールの回避」は、リッピングだけではありません。暗号化されたコンテンツを、暗号を解除せずにコピーした上、暗号を解除する(コピーを伴わずに)方法もあります。たとえば、スクランブル、すなわち暗号化された放送番組の暗号を解除する機器を利用して番組を視聴することは、アクセスコントロールの回避ではありますが、現行法では違法とはされておりません。

Q3
今回の改正で、具体的に何が禁止されるのでしょうか。2copyrightlaw2ndhalf400267

A3
「複製を伴わないアクセスコントロールの回避」が、新たに禁止されるようになります。
たとえば、放送番組のスクランブルを解除する機器(不正な暗号解除カード等)を利用して有料放送を無料で視聴する行為が、禁止されるようになりました。

Q4
アクセスコントロールの回避を行うと、処罰されるのでしょうか。

A4
今回の改正では、アクセスコントロールの回避行為そのものには、刑事罰は科されないこととされました。
ただし、アクセスコントロールの回避装置の販売等については、刑事罰の対象とされるようになり、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはその併科が定められています。

Q5
「配信音源の二次使用に対する報酬請求権」とは何でしょうか。

A5
まず「配信音源」とは、CD等の有体物(レコード)に固定され、その有体物の引渡し(売買等)により配布されるのではなく、有体物の引渡しなしに、インターネット等を介して配信される音源をいいます。
「二次使用」とは、原作品を転載、コピーするなどして利用することをいいます。
ところで、現行の著作権法では、商業用レコードを用いた放送や有線放送を行った場合には、放送事業者等は、レコード製作者に二次使用料を支払わなければならないとされています。この支払い義務を権利者の側から表現して、「報酬請求権」と呼んでいます。

Q6
報酬請求権について、どのような改正があったのでしょうか。

A6
今回の改正は、この報酬請求権の対象を、商業用レコードから、配信音源にまで広げるものです。商業用の配信音源に限らないことに、注意が必要です。
つまり、放送事業者等は、これまでは商業用レコードの音楽を使用した場合にだけ二次使用料を支払っていればよかったのに対し、今後は配信音源を使用した場合にも二次使用料を支払う必要があります。

Q7
「著作権侵害罪の一部非親告罪化」というのは、どのような改正なのでしょうか。


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まず、著作権侵害には、一定の場合については刑事罰が定められています。
刑事罰を科す場合に、被害者(ここでは著作権者等)からの告訴、つまり、捜査機関に対して、著作権侵害という犯罪の事実を申し出て、その処罰を求めたいという意思表示がなければ刑事罰を科すことができないものを、「親告罪」といいます。
現行の著作権法では、著作権侵害罪は親告罪とされています。
これは、被害者が処罰するまでもないと考えて許容している場合や、訴追して事実を明るみに出すと被害者にとってかえって不利益になる場合もあることが理由とされています。
しかし、その一方で、海賊版の組織的な販売など、一見して悪質な行為については、被害者が加害者を調べるなど告訴の努力をしなければならないのは適切ではないという理由で、非親告罪とすべきであるという議論が、1999年頃からすでになされていました。特に近時では、インターネットによる海賊版の頒布(販売はもちろんですが、ファイル共有等による無償の配布も含まれます)の被害は、無視できない規模になっています。
そのような情勢を受けて、TPP協定では、故意に、商業的規模で行われる著作権侵害について、非親告罪とすることが定められました。具体的には、営利目的で行われる行為、営利目的ではないが市場との関係で権利者の利益に実質的かつ有害な影響を及ぼすものが挙げられます。

Q8
非親告罪になると、二次創作もできなくなるのでしょうか。警察に捕まるかもしれないと思うと、怖くて創作活動ができません。

A8
結論としては、今回の改正案では、二次創作は非親告罪にはなっておりません。

我が国では、コミックマーケットのように、二次創作活動から次世代のクリエイターが生まれることも多いという文化があり、一次創作者もかつては二次創作を行っていたという経験から、自己の著作物が二次創作に用いられることを黙認しているという例も少なくありません。このような創作のサイクルに対し、非親告罪とすることで「いつ捕まるか分からない」という萎縮効果を与えるべきではないという懸念も、古くから出されていました。
そこで、今回の改正では、原則として、著作物等に改変を加えずに利用する行為に限って非親告罪とされることになりました。二次創作は原作に改変が加えられておりますので、非親告罪にはなりません。

【おわりに】
今回はTPP協定を受けて5つの点での改正がなされましたが、著作権法は改正の頻度も多く、また今回のようにドラスティックな改正もよくなされる法律です。
これは、創作をとりまく世界が技術の飛躍的進歩と強く結びついており、法律が現実に追いつけていないことが理由として考えられます。
そのため、新たなビジネスを行おうとしても、そのビジネスが適法なのかどうか分からなかったり、逆に、創作を行う場合にも、自分の創作物は法律で守ってもらえるのか分からなかったりすることも少なくないと思われます。
そのようなときには、権利者から訴えられたり、権利(と思っていたもの)を侵害されたりしてから相談するのではなく、ビジネスの設計段階、創作段階から、あらかじめ専門家の助言を受けることをお勧めいたします。 


弁護士法人 法律事務所オーセンスでは、上記のような著作権に関するビジネスのお悩みをはじめ、会社法務、各種契約案件、M&A、労働トラブル、インターネットビジネス等の法律に関わる課題について、経験豊富な弁護士が対応可能です。
まずは、お気軽にご相談ください。
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