MBOと株式上場の意義について

平成28年10月、株式会社アデランスが、MBOを実施することを発表し、平成29年2月10日に東京証券取引所市場第1部において、株式上場廃止となりました。日本では、過去10年間で100社以上の会社がMBOを実施しており、その利用が急増しています。
スタートアップの会社にとっては、株式上場は、一つの目標であることが多いはずですが、苦労の末、株式上場したにもかかわらず、なぜ、MBOによる株式上場廃止を選択するケースが増えているのでしょうか。
今回は、MBOとはどのような制度なのか、MBOを実施する際にどのような点に留意すべきか等について、株式上場の意義と併せて、法律事務所オーセンスの平沼弁護士が解説します。

Q1
MBOとはどのような制度ですか。

A1
MBOとは、Management Buyoutの略で、会社内部でその経営に携わっている取締役や監査役といった経営陣が、株主から株式を買い取り、経営権を取得することをいいます。
一般的には、まず、経営陣及びこれを支援するファンドが、TOB(Take Over Bidの略で、株式公開買い付けを意味します)で株式を株主から取得し、TOBに応じなかった少数株主からは、株主総会の特別決議による定款変更を経て、強制的に残った株式を買い取る手法が用いられることが多いようです。特別決議には3分の2以上の株式が必要ですので、TOBでも3分の2以上の株式の取得が目標とされます。
そして、多くの場合、経営陣が株式を取得した結果、株式上場廃止し(各証券取引所は、株主数や流通する株式の比率が一定数を下回ると株式上場廃止となると定めています)、非公開会社となることが予定されています。
冒頭で述べたように、近年、日本会社でも多く見られるようになってきました。

Q2
どうして、日本会社においてMBOが実施されることが増えたのでしょうか。
そのメリットについて教えてください。

A2
MBOは、多くの場合、株式上場廃止を目的としていますので、MBOのメリットについて考えるためには、そもそも、株式上場すること(しておくこと)の意義について考えておく必要があります。
株式上場とは、会社の発行する株式を誰もが自由に売買できるよう国内の証券取引所(東京、名古屋、札幌、福岡証券取引所があります)において流通させることをいいます。
株式上場すること(しておくこと)には、①不特定多数の株主から返済不要の資金を調達できる、②会社の信用力が増す、等のメリットがあります。
反面、①会社にとって重要な事項は株主総会で決議することとされ、迅速な意思決定が阻害される、②多数の株主を管理するためのコストが生じる、③短期的な利益を求める株主の要求に応えることが負担となる、等の負担も生じます。

会社の業績が良い時は、株式上場のメリットが強調されますが、会社の業績が悪化し、コストの削減や、中長期的な経営再建の必要が生じた場合、株式上場のメリットはそれほど大きくなく、逆に、負担が大きいという経営判断もあり得ます。
このように、MBOには、業績が悪化した会社が、株式上場を廃止することで、コストを削減し、中長期的視点による迅速な経営が可能となり、会社経営の立て直しや健全化をじっくりと図ることができるという点に最大のメリットがあるといえるでしょう。

Q3
会社の業績が悪化した場合の会社再編の方法としては、会社買収などのM&Aによる方法もあると思うのですが、これらの手法と比較した場合のMBOの特徴はどのような点にあるのでしょうか。

A3
会社買収においては、買収される会社にとって、第三者が会社の新しい所有者となりますが、MBOにおいては、従前から会社の経営を任されていた取締役などの経営陣が、株式を取得し、そのまま、会社の所有者となる点が最大の特徴です。
このことは、A2で説明したように、株式上場廃止後、会社のことを熟知した経営陣が、そのまま会社の再建を主導できるというMBOのメリットでもあるのですが、以下のような疑問も生まれます。
すなわち、取締役は、会社の所有者ではなく、会社と委任関係にあって、会社のために尽くすべき立場にあると考えられていますが、会社のために尽くすべき立場にある取締役が、会社を自分の所有としてしまってもよいのかという疑問です。
このような疑問から、実際に、株主と経営陣の利害衝突という意味において、問題を生じるケースが少なくありません。

Q4
過去のMBOにおいては、株主代表訴訟という形で、後に、会社や経営陣が、株主から損害賠償請求されたケースもあるようですが、どのような点が問題となったのでしょうか。

A4
A1で説明したように、MBOにおいては、経営陣が既存株主からTOBにより株式を買い取ることになります。
TOBは、買付価格や買付期間等を公告し、実施されることになりますが、この買付価格について争われるケースが多いようです。
もちろん、買付価格については、経営陣が専門家の意見を聞きつつ、直近の株式の市場価格に多少のプレミアムを付けた金額とすることが通常なのですが、当然、経営陣は、安く買いたいと思うでしょうし、既存株主は、高く売りたいと思うでしょうから、双方の利害が鋭く対立することになるのです。
例えば、直接会社の経営に関与し、会社の情報をコントロールし得る立場にある経営陣が、直近の会社の業績予測を下方修正したり、意図的に費用を積み増して業績を悪化させたりすることにより、株価を暴落させ、その後にTOBを実施した場合などを想定すれば、既存株主が納得しないことは容易に想像できます。

Q5
では、実際にMBOを実施することを考える際には、どのような点に気を付けるべきでしょうか。

A5
最も重要なことは、MBOを実施する目的を明確にしておくことです。
MBOを支援するファンドが存在するような場合、ファンドとしても投下資本を回収する必要があるので、期間を決めて、経営再建を図ったのち、株式再上場させるという目的を持つケースが多いと思われます。

しかしながら、株式上場廃止したものの、当初の見通しが甘く、経営再建が進まないケースはもちろんのこと、A4で説明したように、MBOには、経営陣と株主との利益相反的な側面がありますので、株式再上場先の証券取引所も、市場の信頼確保の観点から、株式再上場については審査指針を公表し、厳しく審査することとしており、株式再上場を果たせた会社は多くはありません。

また、株主を置き去りにしないということも重要です。
MBOにおいては、ただでさえ、経営陣と株主との利害が衝突する関係にあり、十分に株主の理解を得ながら手続きを進めることが肝要です。
株主を置き去りにしたMBOは、株主から訴訟を提起されるリスクがあるだけではなく、株式再上場時の審査や会社のイメージにも影響を及ぼします。
MBOを行う目的や株価に影響を与えるような重要事項について、株主に適切に情報を開示したうえで、その理解を得ることが重要であるといえます。
このように、MBOにおいては、複雑な各手続において、手続的な公平性を保つために、第三者的な専門家の助言が不可欠だと思われますので、しっかりと専門家のサポートを受けつつ、実施することをお勧めします。


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