スタートアップ登場: IoTで米のサプライチェーン改革、残量低下を検知し精米したての商品を発送


IoT(Internet of Things:モノのインターネット)を駆使して、日本人の主食である米のサプライチェーン改革に乗り出したスタートアップ企業がある。2016年8月に創業した、その名も米ライフ(マイライフ)だ。

家庭の米びつに残っている米の量を小型センサー「米びつセンサー」で測定し、残量の低下を検知するとスマートフォンの専用アプリ「米ライフDash」に通知。同時に、前回購入した商品をアプリ画面に表示する。利用者が画面を数回タッチして発注と決済を終えると、ほどなくして精米したての米が自宅に届く。

「米は生もの。精米した直後から劣化が始まり2週間ほどで本来のおいしさが失われます。高価でおいしい米を購入しても、食べ終わる頃には味が落ちてきてしまいます。農業に従事してきた身としては、最もおいしい状態の米を食べてほしいのです」。富田航大社長は起業時の思いを、こう説明する。

「もともと独立志向が強かった」という富田社長は、高校時代からWeb制作を手掛けてきた。ただ、「どちらかというと実体がないWebを取り扱う中で、次第にモノをシンプルに販売する仕事に興味を持つようになった」と話す。いったん企業に就職して営業職の経験を積んだのち、高校で体系的に農業の知識を学んだ経験と祖父が農業を営んでいた縁で、農業の世界に飛び込んだ。

富田社長は3年ほどメロンやイチゴの生産に従事してから、水田の保全管理業に乗り出す。米農家と接する機会が増えるにつれ、消費者と米農家との関係の深さと、ある種の脆さの両面が見えてきた。

農家には、米を定期的に買いにやってくる常連の消費者がいる。一方で、米びつが空っぽになったタイミングで、ひとまず間に合わせるために最寄りのスーパーで米を買ったのを機に、農家から縁遠くなる消費者もいる。消費者と米農家をつなぎ、構築した関係を保つ方法はないものか。思考を重ねる中で、米ライフのサービスのアイデアは「自然と固まった」(富田社長)。

クラウドファンディングの結果を受け、ビジネスの価値を再定義

「2人以上の世帯における米の平均消費量は、1カ月あたり6kg程度」(富田社長)とされる。多くの世帯が、1袋5kgの商品なら毎月、10kgならほぼ1カ月半に1回の頻度で購入している計算だ。

重たい商品を自宅に持ち帰らなくてすむ。買い忘れによって米びつが底をつくこともない。何より、いつでも新鮮な米を食べることができる。米ライフが手掛けるサービスの利点は主婦層を中心に受け入れられ、2017年2月末に東京都内在住者を対象にサービスを開始してから約2カ月で、利用者は数百人に達しているという。

目論見通りに新ビジネスの垂直立ち上げに成功したかに見える米ライフだが、実はサービス開始の数カ月前に、想定していたビジネスモデルを大きく変えている。

富田社長は2016年11月から12月にかけて、市場ニーズを把握するテストマーケティングの意味合いもあり、米びつセンサーや専用アプリの開発資金をクラウドファンディングで募った。ところが結果は振るわず、目標額に対して10~15%までしか出資の輪が広がらなかった。「当初は、米の残量を把握して補充のタイミングを知らせることに価値があると考え、米びつセンサーに1個8000円の価格を付けていた。しかし、クラウドファンディングの結果を受けて、間違っていると気付いた」と富田社長は振り返る。

米びつセンサーは縦7㎝、横3.3㎝、厚さ1.3㎝の小さなケースに、距離を測る赤外線センサーやスマートフォンのアプリと通信するBluetooth機能、バッテリーを備える。米びつ内側の上部に取り付け、満量時と空のときの米からセンサーまでの距離をあらかじめアプリに設定しておくと、残量が25%を切った段階でアプリに自動で通知する仕組みになっている。

IoTで家庭の米の残量を管理・通知する仕組み自体、他に類を見ない。だが「消費者にとってはセンサーやシステムに価値があるのではなく、残量が減ったタイミングで精米したてのおいしい米が届く一気通貫のサービスに本当の価値がある」。富田社長はそう考え、米びつセンサーを無料でレンタルすることにした。

自ら目利きした米のファンを増やし、収益基盤を固める

方針変更が奏功し短期間で多くの利用者を獲得したとはいえ、「万人規模の消費者が継続して利用する米のインフラサービス」を目指す富田社長にとって、現状は「まだまだ」。サービスの進化に向けて今日も奔走している。

産地やブランドではなく、「農家」と「いっさいブレンドしない米」にこだわる富田社長が今とりわけ力を入れているのが、米の仕入れ先となる契約農家の拡大だ。現在2件の契約農家を全国に広げるため、2017年中に自ら軽トラックを運転して全国の米農家を訪問する。「時間はかかるが、実際に現地を訪ねて農薬の使用方法などを個別に聞くことが、おいしい米を作る農家と出会ううえで欠かせない」(富田社長)と考えてのことだ。

契約農家の拡大と並行し、消費者と米の出会いを創出する「利き米」サービスの展開も計画している。自ら目利きして仕入れた米のファンを増やすことでサービス利用者の増加と再利用率の向上を図り、米ライフの収益基盤の盤石化を狙う。

さらに、米びつの残量把握から発注、決済、補充まで完全に自動化すべくシステムの機能拡張を進めている。具体的には、米びつセンサーで集めたデータを基に、各家庭の米がなくなる頃合いを見計らって精米を開始し、タイミングよく商品を届ける。実現すれば、利用者はもはや米びつの残量を気にすることなく、いつでも精米したての米を食べられるようになる。

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